8月3日(日) 18:00~ @オンライン
8月はフランス文学に挑戦!
(毎年この時期は日本の「終戦の日」を前に「戦争と平和」をテーマに作品を選んでいますが、海外文学ですみません…)
コロナ禍で話題になった、カミュの『ペスト』。
この講座は〈予習不要の初心者向け〉ということで、「なんで『戦争と平和』がテーマなのにパンデミックの話?」の説明からスタートしました。
カミュの『ペスト』は中世にヨーロッパ中で猛威を振るったペストについての物語ではなく、「今(1940年代)、この街でペストが発生したら?」というストーリーになっています。
この作品では感染症が拡大する非常事態(=不条理)を生きる人々が描かれていますが、実は作者が第二次世界大戦中に経験したことを反映している作品です。
戦争、感染症、災害…思い通りにいかない「不条理」の中でどう生きるか?
過去の話としてではなく、現代の私たちも直面する「不条理」を新しい角度で考えてみました。
・作者カミュ
・物語の全体像と登場人物
・それぞれの「ペスト」ー変わらない者
・それぞれの「ペスト」ー変化した者
舞台はアルジェリアの港町オラン。
穏やかなこの街で、医師リウーが一匹のネズミの死骸につまづくことから物語は始まります。
日に日にネズミの死骸が増えていき、ついには人間の感染者も確認され…
その後、都市封鎖、感染者ピーク、そして収束、解放…と数ヶ月に及ぶ「ペスト禍」の中で様々な局面が描かれます。
この作品の特徴は主人公がいない(書き手が最後まで明かされない)ところ。
登場人物それぞれの気持ちや行動は、「十人十色」ですが、どれも人間として当然のもの。
私はペストを通して「一貫して方向性が変わらない人」と「これまでにない体験により、価値観が大きく変化した人」に分類して解説しました。
ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということなんです。
カミュ、宮崎峯雄訳『ペスト』新潮社
僕が心をひかれるのは、自分の愛するもののために生き、かつ死ぬということです。
カミュ、宮崎峯雄訳『ペスト』新潮社
自分の使命を全うする医師リウー。
少年時代のある体験が忘れらず、「正義」に疑問をもつ旅人タルー。
社会の混乱により自身への注目が逸れることを喜ぶ密売人コタール。
「ペストは人間たちへの罰」と考えるパヌルー神父。
パリから仕事でやって来て、故郷に帰れなくなった新聞記者ランベール。
登場人物たちが互いに影響を与え合いながら進展する物語、それぞれの運命は…!?
【トークテーマ】
・「不条理」の描き方
・ペスト禍での行動に影響を与えた、それぞれの過去
・アルジェリア独立
不条理を生きる登場人物たちの行動・価値観は様々。
その背景には、自分の立場・思想や過去の体験に支えられています。
「ペスト禍」だけを切り取るのではなく、登場人物たちの過去まで描くことで厚み・深みのある物語となります。
読み手は自分と同じ(似た)境遇や選択をする人物に共感し、心の支えになる言葉に出会えるでしょう。
また異なる立場の人物に感情移入してみると、新たな気づきや疑問が生まれることも。
今回は主要人物が5人いて、それぞれエピソードを紹介したので、参加者の皆様は大きく感情を揺さぶられたようです。
ノーベル文学賞作家を最年少(当時)で受賞したカミュ。
彼が描く登場人物たちの言葉や行動には、第二次世界大戦の記憶と独立へ向かう故郷アルジェリアに対する思い…そして平和への願いが込められていました。
80年前の戦争、現在も世界のどこかで起こっている戦争・紛争、数年前のコロナ禍、その他長い歴史の中で、人類が経験した数えきれない「不条理」。
誰もが平和・平穏を求めているのに、情勢や感染症などによって思い通りに生きられない…そんな時代をどう生き抜くか?
時代や国、原因・状況は関係なく、トークタイムでは話がどんどん広がり、お互いに広い視野で考える時間になりました。
ご参加いただきありがとうございました。



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